Unity Adsと『breaker』

30秒という限られた時間で、大量のブロックを破壊する爽快感がウリの『breaker -30秒でどこまで壊せますか?ブロック崩し-』(以下、breaker)。本作は取材を行った 2015/08/14 時点でiOS版 / Android版を合わせ60万超のダウンロードを記録しており、Unity Adsを利用したマネタイズにも成功しています。基本プレイ無料で、動画広告を軸としたゲームデザインはどのようにして生まれたのでしょう。本作の開発とマネタイズに携わった株式会社イグニスの川口 功氏、横川 祥子氏、的打 久志氏の3名に話を伺いました。

『breaker』とは

ブロックを一気に破壊する爽快感が特徴のゲームです。『breaker』は、ステージの進行に伴って巨大化していくブロックを、「ボール」、「バー」、「ショット」、「分裂ボール数」といったステータスをレベルアップさせながら破壊する、一風変わったシステムを採用しています。レベルアップにはブロックの破壊、または動画広告の視聴で獲得できるポイントを使用します。

30秒という限られた時間で、永遠に続く世界をどこまで壊せるか挑戦してみてください。

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■『breaker』の開発とプロモーション

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左から マネタイズ担当の的打氏、横川氏、プロデューサーの川口氏

――まず『breaker』の開発についてですが、計画が立ち上がってから公開、ローンチに至るまでどれくらいの時間がかかりましたか?

川口: 『breaker』は2015年の2月下旬に開発がスタートして、5月下旬にAndroid版をリリース、7月初旬にiOS版をリリースしました。アップデートのしやすいAndroid版を先行リリースして、まずは様子を見ようと。開発期間でいうと3か月程度ですね。これはイグニスが開発する中規模のアプリでは一般的な期間です。だいたい3か月程度で開発を行っています。

―― ゲームエンジンはCocos2d-xを使用されているということですが、Unity Ads SDKの実装には手間取りましたか?

川口: そもそものお話で、Cocos2d-xはiOSをベースにしたゲーム開発環境なので、Android向けの開発は難しい部分がありました。ただ、これはどのゲームを作るにしても同じ課題ですので……。
マネタイズのパートに関して言えば、Unity Adsのマニュアルが日本語に対応していたので、わかりやすかった印象はありますね。日数でいうと、実装にはiOS / Android合わせて1日かかってないです。慣れればもっと短くできると思いますよ。

――現時点での国内ダウンロード数はどれくらいでしょうか。

川口: ダウンロード数に関しては、iOS版 / Android版合わせて60万超です。

――どのようなプロモーションを展開されたのでしょうか。

横川: ネットワーク広告と、自社誘導、SNSで拡散されるようにYouTubeでゲームの紹介動画を公開しました。

的打: あとは大手ゲームメディアにゲームの紹介動画を付けてプレスリリースを送りました。そこからの流入も多かったです。

――App Storeのランキング上位にも入りました。

的打: 10位以内は10日間、5位以内は8日間ですね。この期間に爆発的なユーザーの自然流入が得られました。予想以上の影響があって驚いています。

■広告収益・課金収益のバランス

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――広告、課金の収益比率についてお答えいただけますか?

的打: iOS / Androidで多少の違いはありますが、『breaker』は課金の占める比率もかなり大きいですね。だいたい全体の20~30%が課金収益でした。

横川: イグニスの開発したアプリは広告で収益を得ているものがほとんどだったので、課金でも収益を得られたケースが生まれたのでよかったと思います。

――理想的な収益バランスですね。

川口: なるべく、課金というものを意識させないつくりにしようとデザインしました。課金画面はゲームオーバー後、下にスクロールさせないと出現しないようになっています。もともと、課金への導線はそれほど目立たないようにする予定でした。
ちなみに、『breaker』にはプレイを続ける中で見えてくる「難易度の山」を作っていて、そのタイミングで課金するユーザーが多かったですね。

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ゲームオーバー後と、ステータスをレベルアップさせる画面
(下にスクロールすると課金画面が出現)

――課金が一番多かったのは、やはりすべてのステータスがレベルアップする「ALL UP!!」ですか?

的打: そうですね。ダントツです。その次に「ボール」が人気でした。単純に威力があがったことをすぐ実感できるからだと思います。正直、課金がここまでうまくいったのは初めてでした。課金セグメントで見ると¥1000~¥2000が一番多かったですね。繰り返し購入される方が多かったです。

■「30秒」のキーワードと、動画広告視聴を当たり前にするサイクル

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――「30秒」というキーワードがとても上手だなと思ったのですが、あのアイデアはどなたが考案されたのでしょう。

川口: 私です。60秒バージョンもテストしましたが、『breaker』の爽快な部分がなくなってしまったので、やはり30秒がちょうどいいのかなと。

――ユーザーは1日にどれくらいの回数『breaker』をプレイしていますか?

川口: ユーザーが1日平均10回の動画視聴を行っているというデータがあります。動画広告は4プレイに1回出現するので、1日平均40プレイくらいですね。時間に換算すると1日平均20分はプレイしていることになります。

――「難易度の山」のバランスはどのようにして決定されましたか?

川口: 感覚値ではありますが、一番大切にしたのは最初の動画広告を見せるまでのフェーズです。最初のボスが倒せなかったときに必ず動画広告を出すようにしていて、その際の付与を普段より多めに設定しています。そこで一気にレベルをあげてもらい、爽快感を得て動画広告に対するマイナスイメージを抱かせないようにという設計をしました。そのほかに、その日の初プレイでは2倍の付与をもらえるようにして離脱を防いでいます。日があけばあくほど、付与のレートをあげていくといったこともしていますね。

――ゲームデザインとして、動画広告を見るのが特別なことではない、当たり前のように視聴するサイクルを作ろうとした、ということですね。

川口: その通りです。日本のゲームで動画広告はまだまだ主流ではないと思っているので、とにかくマイナスイメージを抱かせないようにデザインしました。

■静止画広告の管理は完全に自動化

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――ゲームのマネタイズを行うにあたって、ここまで動画にフォーカスしたのはイグニスとしてはじめてでしょうか?

的打: そうですね。動画広告にチャレンジしてみようという方針に決まったのが今年の3月あたりで、そのときにちょうど川口のプロダクトに動画広告を入れてみることになりました。そこから数値を見ていたのですが、これがなかなか良くて。

――運用についてはどのように実施されていますか?

横川: 静止画広告に関してはJava Scriptで配信を行っていて、自社で配信比率を自動調整できるようなエンジンを持っています。アドネットワークの管理画面と連携させていて、そのデータをもとに自動調整がかかる、というものです。以前は手動で調整していたのですが、連日、アドネットワーク会社とのやりとりが発生するということで、2年ほど前に自動化のプロジェクトが始動しました。いまでは『breaker』に限らず、イグニスの開発したアプリすべての静止画広告をこれで管理しています。

――動画広告に関しては計測データが多岐に渡るので、なかなか一元化できないと思うのですが、もうしばらくは手動でという感じでしょうか?

的打: そうですね。動画広告に関しても、次のステップとして自動調整が可能か調査中です。今のところはeCPMとフィルレートを見ながら、地道に調整という感じです。

■今後は海外展開、続編として「30秒シリーズ」を検討

――『breaker』の今後の展開について、教えていただけますか?

横川: 韓国などのアジア圏を中心に海外展開を検討しています。

川口: なるべく文言を入れないように開発を進めたので、広告にさえ気を付ければローカライズは容易ですね。
アップデートについては、いまのところ、ユーザーからご指摘いただいた問題点の改善が主になります。

横川: ユーザー数を増やすオペレーションとしては、もう少しTwitterなどでシェアをしたいと思うような設計を入れたいですね。プロモーション費をかけなくても、ユーザー同士で広まっていくような形が理想です。

――『breaker』は1本のアプリケーションとして完成されていると思います。そういう意味では、大きなアップデートよりは続編をという考えでしょうか?

川口: そうですね。『breaker』と同じようなロジックではあるものの、まったく違ったゲームとして提案していきたいと思っています。